カテゴリ7を使いたい

大前提

昨今ではもはやライフラインと言っていいほどに浸透した固定回線ですが、安定した性能が重視されるインフラ周りのものは枯れた技術を使うことが美徳とされています。

例えばご自宅のルーターファームアップデートなんて明確な脆弱性がない限り誰もやったりしないですが、これは「今安定して動くこと」を重視する世界では極めて正しいことです。

このエントリは「それでもカテゴリ7のLANケーブルとそれを活かすための環境を揃えたい」と思う人に向けた攻めのドキュメントです。

そのカテゴリ7ケーブルは本物か

カテゴリ7のケーブルは STP です。STP とは Shielded Twisted Pair の略で、信号線を金属被覆で覆う処理が施されたものを示します。 カテゴリ6以前で使われる UTP は Unshielded Twisted Pair で上記のような加工されていないものです。

コネクタについて言うと

  • カテゴリ6以前で使われる RJ45 は使用不可能。TERA コネクタまたは GG45 必須
  • TERA は完全に別物、国内家庭用ルーターにこれが刺さる口はほぼ無い
  • GG45 はググるとなんか RJ45 が挿さりそうなソケットに見える
    • 実際に RJ45 を挿すとカテゴリ6相当の速度で動作する(モード1/互換モード)
    • GG45 のコネクタは、ケーブルの上下面にそれぞれ 4 ピンずつ配置されている

となります。

基本的にご家庭のルーターに物理的に刺さるケーブルは RJ45 搭載なので全て偽物です。たとえちゃんとした業務用スイッチがあり、そこに挿したとしてもカテゴリ6Aより高速に動作することはありません。残念でした。お帰りください。

本物のケーブルを入手した各位はこの下を読みましょう。

本物のカテゴリ7ケーブルを運用するために

信号経路に発生するノイズは2つに大別されます。

  • 内部ノイズ(信号処理をする回路や電源回路から発生する)
  • 外部ノイズ(設置環境に存在するノイズ源に由来するもの)

内部ノイズはどうやっても消せません。業務用のネットワーク機器においては、高品質な電源や信号処理回路を設計することで内部ノイズを抑え、高信頼性を実現しています。

逆に言えば、外部ノイズへの耐性は、単一のネットワーク機器では担保できないということです。LAN だけの話ではないですが、信号伝達における外部ノイズの除去を行うためには、その経路全体を シールド することが重要です。

電磁シールド(でんじシールド)とは、導体製の障壁で二つの場所を仕切って、 
二つの場所の間を電磁場が流れるのを制限するための処理である。

LAN の文脈において 二つの場所 とは「信号経路」「外界」であり、導体製の障壁 とは「金属コネクタ」「ケーブルの被覆」「接続するネットワーク機器の内部に配置された金属被覆」です。 場所を仕切る というのは、これらの障壁が切れることなく接続されることで、そこに 大きな穴や切れ目があってはならない ことになります。

  • ケーブルは金属で被覆されているけど、コネクタは金属じゃない(切れ目)
  • ケーブルとコネクタは金属で覆われているけど、ルーターの口が金属製じゃない(切れ目)
  • ルーターが被覆されていない(穴 / 切れ目)

などは NG です。接続されてない被覆はノイズ発生源になりうるので気をつけましょう。

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前述のTERA / GG45 は金属コネクタの規格ですが、これを必須とする意図がわかったと思います。

ネットワーク機器の選定

上記の通り、内部の回路が被覆されていることが前提です。被覆に小さな穴(具体的には想定するノイズの波長より小さい穴)が存在すること自体は問題ありませんが、そこらへんが設計で担保されている業務用機器から選定するのがよいです。

信号用アースがある建物の選定

また、導体製の障壁 自体に電気が流れて電磁波が発生してしまえば元も子もありません。電気を流さないためには、二点の間に電位の差が発生しなければ良いので、ケーブルで接続する2つの機器を アース する必要があります。

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家庭でもアース線はありますが、動力機器などの大きな電流が流れる動力用アース(保安用設置)に普通に接続すると、動力機器自体が電位を変動させてしまう要因になってしまうので、 ネットワーク機器のアース端子から1点に集めるように信号用アースを作ってから、信号用アースの線を動力用アースに繋ぐことで、信号用アースと動力用アースの接続点の電位で全ての機器が揃う = 電流が流れないことを担保するという方針になるでしょう。

これを信号経路全体、つまり 全機器 に対して行う必要があります。PS4は諦めて無線にするか捨ててください。

工場や事業者用の物件だと信号用アースがあったりしますが、一般家庭にはまずないので、アース線を手でまとめるか、建物に手を入れる必要があります。

まとめ

それほどまでにスループットが気になるなら家の場所から考えなきゃいけないと思うので、家を建てよう!

個人的には、どうせ建物に手を入れるなら GG45 コネクタ対応の情報コンセントや信号用アースの接続点を家中に設置したいという夢がありますが、10年単位で先の話になるかなと思っています。